2015年11月5日木曜日

君たちはどう生きるか 吉野源三郎著(岩波文庫)

戦前の旧制中学の生徒向けの本なので、
今から読むと少し「?」なところがある。
学校の雰囲気とかから察するに相当いい学校なのだろうから、
これを中学生一般のお話として無批判に読むのもどうか・・・と思ってしまう。
しかし、しかし。
それでもこの本は中学生から高校生が読むに値する本なのだ
(このレビューでは岩波文庫版を扱うが、中高生が読むならむしろ他社の版を読んだほうがいい。丸山真男の解説は難しすぎるし)。
 世の中はどうなってるのか(社会科学)と人間いかに生きるべきか(倫理)という、
ある意味で水と油の分野をくっつけようとしたところに、この本の大切さはあるので、
まずはそういう部分を気にして読むとよい。
でも、それだけでは物足りない。なぜか?
 この本の初版が出た頃の中学生は(そう、数多くのコペル君は)、
学徒出陣を経て数多くが戦死したと言う話を聞いたことがある。
いかに生きるか、という選択肢は「ありえない」時代。
戦没学生の手記「きけわだつみのこえ」を書いた人の中に、
数多くのコペル君がいたと思うと何やら慄然とするものがある。
こうした歴史的背景を押さえて読むと、この本の重みがよーくわかるのだ。

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