2016年3月7日月曜日

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 村上春樹著(新潮文庫)

弊社代表、多忙につき、ここ3週間、まともに読書できていないとのこと。
あんなに本好きなのに…。かわいそうに…。

となれば、わたしがブログを更新しましょ。
本日は村上春樹の小説を。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』。上・下巻です。

村上春樹の小説を読みなれている方であれば、早い段階で「感覚」をつかめるはず。
しかし、そうでない方にとっては「・・・へ?」という感想しかもてないはず。
高校生のとき、本書のページをめくった私のように。

大学の講義中、教壇に立つ教授が、「日本の村上春樹という小説家は、人のこころの仕組みをよくわかっている」と話していました。
白人の口から「はる~き、むらか~み~」と、日本人の名前を聞けてなんか嬉しかったので、ダウンタウンのブックオフ(あるんです!カナダにも!)で、古本のくせに日本の新本の3倍の値段の『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を購入。
高校生のときには「・・・へ?」という小説でしたが、さて。

人の記憶や認知をベースに話が進んでいきます。
そして、記憶や認知こそが「ひと」そのものなのだ、ということをファンタジーで表現しています。
心理学をお勉強したことのある方であれば、認知心理学の基礎理論を組み合わせただけの茶番じゃん!と批判的に捉える方が多いはず。
たしかにそうかもしれませんが、でも、どんなに深く心理学を学んでいる方でも(そんな方だからこそ)、基礎理論をここまではっちゃけたものにはできないはず。

最近、本書をもう一度読み直してみました。
やはり、はっちゃけてます。あそんでる。だから、クセになる。

実は、村上春樹の、ふわふわ&背筋がむずがゆくなる言葉は、まったく得意ではないわたし。
でも、彼の小説の「形」が好きです。
ひと特有の複雑さを描こうとする、その形。
単に感情の面だけではなく、構造的な面での複雑さ。グッド。

好き嫌いがはっきりと分かれる作家ですよね・・・。
でも、食わず嫌いはよくありません。
嫌いになるにしても、一度は読んでほしい作家です。
・・・とすすめて、私の知り合いは大っ嫌いになりましたが・・・。