2015年11月5日木曜日

テロリストの軌跡―モハメド・アタを追う 朝日新聞アタ取材班著

朝日新聞に連載されていた当時から、この本の基になった連載記事に注目していた。
貿易センタービルの凄惨な光景、
そしてアメリカによる戦闘行為といったテロ以後のことを語る論調が圧倒的で、
テロ以前のことを考えさせる記事に飢えていたからだ。
貿易センタービルに突っ込んだメンバーの一人、
モハメド・アタの留学時代を本書は丹念に追うことで、
イスラム世界と西欧近代社会との狭間で葛藤していたテロリストの「原型」をこれでもか、
とばかりに浮き彫りにしていく。
「乗客乗員92人を乗せた同機は、午前7時45分ごろ離陸する。
約一時間後、ニューヨーク世界貿易センタービルに激突した。」
本書のメインの部分はこの一行をもって締めくくられる。
この一行を語るために、数百ページが費やされた。
この一行を読む度に、ある種の戦慄を覚えるのだ。
地道な取材を続けてきた記者たちに敬意を表したい。

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